朗読台本・34 酢豚のパイナップル

「酢豚のパイナップル、だあ?」

同僚の山元が炒飯をかきこみながら素っ頓狂な声をあげた。

「お前、そんな事いつも考えてんの?」

僕は「そんな事」と言われて少しむくれる。僕にとって酢豚のパイナップルは仇敵と言っていい。まだ給食を食べていた小学校時代から、その戦いは始まることになる……。


給食が僕と酢豚のファーストコンタクトだった訳だけど、甘酢あんにからんだカリッとした豚の素揚げに、人参の柔らかな、玉ねぎのシャキシャキとした、ピーマンのほんのり苦味の効いた食感に、そのあまりの旨さに驚いた。こんな旨いもの、いくらでも食べられると、僕はアルミ製の皿を持ち上げてばくばくと平らげた。

ーーだが、しかし。口の中にぐにゃりと、形容し難い食感が加わった。しかもほんのり甘い。僕は訳がわからなかった。旨いものに毒を仕込まれた気分だ。


それ以来、僕は酢豚を頼むとパイナップルをしつこく探して残すようになった。

そんな嫌なら頼まなけりゃ良い、山元は横目で笑った。

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